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Channel: 数多久遠のブログ シミュレーション小説と防衛雑感
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ハイテクも大事だが

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テロ対策用に産学官で開発されて来たハイテク機器が実用化される見通しだと報じられています。
テロ阻止、先端技術の出番 日立や東芝、小型爆弾発見2秒など」(日経新聞09年7月2日夕刊)

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 小型爆弾や生物兵器などテロ兵器の対策として産学官が開発してきた防護機器が、2~3年後にも実用化する見通しだ。日立製作所は小型爆弾を瞬時に発見する装置を試作、実証試験に着手するほか、東芝などは生物兵器となる病原体の検出技術を開発、今月から警察などに導入を働きかけ始めた。テロ兵器は身近な材料とハイテクで急速に高度化しており、脅威が増している。海外も日本の先端技術に注目している。

 日立の装置は海外のテロ事件で使われ問題化している小型爆弾をわずか2秒で発見できる。大きさは約60センチメートル角で100キログラム。物質の重さから物質の種類を特定する質量分析装置を応用した。
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日立の装置は、プラスチック爆弾から揮発する微量物質を感知するもので、東芝の物は生物兵器の検知用のようです。

私が現役時にも、防衛庁(当時)に爆弾検知装置など同種の機器が売り込みされていましたが、眉唾物とまでは言わないものの、どれも性能は不十分でした。
報じられているものが果たして本当に使い物になるものなのかは分かりませんが、興味があるところではあります。

これ自体は、少しも悪いニュースではありません。ですが、日本のテロ対策は、こう言ったハード面よりも、運用などソフト面に問題が有り過ぎます。

その良い例がコレです。
米国製手りゅう弾と判明 旅客機内持ち込み」(琉球新報09年3月25日)


機内に持ち込まれた米国製MKII破片手りゅう弾の不発弾(琉球新報より)

不発弾とは言え、爆発する可能性のある生きた手榴弾が、空港のセキュリティチェックを通過し、機内に運び入れられていた訳です。手りゅう弾は、預かり手荷物としてX線検査装置などによるチェックを受けていたはずですが、発見されなかった事になります。
プラスチック爆弾どころか、金属塊である手りゅう弾を見逃している状態ですから、これはもう装置の問題ではありません。
(ただし、多少の弁護をするなら、最新の装置はプラスチック爆弾などを着色して表示する機能があり、検査係はそれだけを見ていた可能性もあります。)

また、この件では、もう一つソフト面の問題が見て取れます。
それは、監督官庁である国土交通省の責任意識の低さです。
この件を報じた別の記事で、国土交通省那覇空港事務所は「このようなケースは聞いたことがない。もし事実なら、原因究明や再発防止に努めるよう要請する」と話した、と報じられています。
セキュリティチェックの直接的責任は、航空会社にあった訳ですが、「要請する」ではなく、自己の責任範囲の事項として捉え、国土交通省として対策を講じなければならないにも関わらず、こんな人事なコメントを出しているようでは、ダメです。

新たなハイテク機器が実用化されても、係官や監督官庁の意識など、ソフト面を改善しなければ、テロは防げないでしょう。

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